帰路と旅路のシナリオ 9つの舞台装置から生み出す新たな瀬戸内の風景
「帰路と旅路のシナリオ」は、瀬戸内海の島嶼部に9つの舞台装置を設計し、それらを船で巡る空間体験の提案である。作者自身が旅人となり、広島県の三原港より土生高速船に乗船し、佐木島、因島、生名島の6つの港でフィールドワークを行った。主に高度成長期につくられ現在は使われていない「忘れられた場所」に着目し、その再興を提案している。桟橋や灯台など各所を巡る空間体験を通して、旅人には瀬戸内の美しい景観と暮らしを、地域住民には島の魅力を再発見してもらい、両者の交流が目指されている。この作品は、舞台装置での「風景空間」の体験により、人々が記憶を共有する点が高く評価できる。インテリア分野としても興味深い提案といえよう。
担当教員:広島工業大学 平田 欽也 先生